教員からのメッセージ

大学で学ぶ「憲法」

小谷順子 教授

(憲法)

 憲法は、人類が長い歴史のなかで生み出した知恵の集大成です。人々が幸せに生きることのできる社会をつくるために、人々の自由と権利を最大限に守り、権力者の権限濫用を防ぐための工夫を凝らした「国のあり方」を定めたものが近代の憲法です。憲法とは、一言で言うと、国を統治する際に権力者が守るべきルールです。
 憲法の授業では、諸外国で憲法が発展してきた経緯、そして、日本の憲法の歴史、日本国憲法の基本的原則、当地機構、人権保障などの全体像を学ぶと同時に、憲法に関わりのある様々な問題点を、裁判所の判例や憲法学者の学説を分析しながら、検討していきます。
 憲法を取り巻く環境(国内社会や国際社会)は常に変動していますので、憲法上の新しい論点も次々と生じてきます。たとえば、治安維持やテロ対策などを目的として、国や自治体が監視カメラを設置したり、指紋やDNAなどの個人情報を収集する傾向が高まっていますが、社会の安全(つまり人々が自由に生活できる環境)を維持するために、どこまで個人の自由や権利を制限することが許されるのでしょうか。また、インターネット上の掲示板での誹謗中傷などは社会的にも問題となっていますが、憲法で保障された表現の自由を守りつつも規制をすることは可能なのでしょうか。
 憲法学では、従来の論点を考察するだけでなく、このような新しい問題についても、国際社会や国内社会の状況を見極めつつ、判例や学説に照らしながら考察していきます。その意味で、憲法学は、「国のあり方」について総合的に研究する学問であると言えるでしょう。

行政学を学ぶ

日詰一幸 教授

(行政学)

 行政学は「行政」に関わる現象を包括的に研究対象とする学問です。そして、その問題関心は公共領域における制度、管理、政策の側面に置かれます。行政学自体は、政治学という学問領域から枝分かれした学問ですが、隣接領域である法律学、経済学、経営学、社会学等とかなり親近性を持っています。政治学もかなり間口の広い学問ですが、行政学もそれに劣らず多くの学問領域との接点があると言えます。
 政治学と行政学を比較した場合、行政学は特に政策執行を担う行政システムやそれを担当する公務員集団の役割や行動に焦点を当てるところに特色があります。そのため、過去の行政学の研究では、「官僚制」研究にかなり重きが置かれてきました。その伝統は今日も変わっていないと思いますが、今日はそれに加えて政策研究のすそ野が拡大しています。例えば、政策過程論(政策立案、政策決定、政策実施、政策評価の各段階)や政策科学を含む公共政策論、さらには市民参加論といった分野への関心の増大がみられ、研究も蓄積されています。その結果、行政学の守備範囲も従来の行政学理論、官僚制論、行政組織論に加えて、公務員制度論、意思決定システム論、地方自治論、公共サービス改革論、行政責任論、そして政策関連の研究へとどんどん広がっています。
 一方、行政学と行政法学を混同する人がいますが、両者には大きな違いがあります。行政学は前述のように、政治学との近接性がかなり大きいのですが、行政法学は明らかに法律学の一分野という位置づけがなされます。つまり、法律学的思考様式を用いて行政現象を解明する学問であるということです。この点が両者の大きな違いであると言えます。
 大学において、このような行政学を体系的に学び、グローバル化した現代社会における「行政」の実態やその役割を自分なりに解明する力を養うことは、とても意義深いことだと思いますし、そこから現代社会の抱える解決策を見出すきっかけがつかめるかもしれません。「行政学」は言葉だけを見ると硬く難解な学問だと思われがちですが、実は実態社会を分析するツールの一つにもなりえるのです。