対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

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対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

対人援助職の倫理的・法的対応力の育成多文化共生社会における臨床実践力と実証的研究能力の向上はじめにプログラム代表者静岡大学大学院人文社会科学研究科臨床人間科学専攻長松田純3.11大震災と原発事故によって,わが国はいま大きな困難に直面しています。それ以前から,少子超高齢社会の到来,医療・福祉・社会保障の持続可能性,グローバル化時代における世界的な金融財政危機など構造的な要因も根底にあり,明確な将来展望を描きにくい状況が続いています。こうした世界的な危機と国難のなかにあって,さまざまな分野における対人援助活動の持続的な発展と質の向上はますます重要なものとなっています。わたしたち(静岡大学大学院人文社会科学研究科臨床人間科学専攻)は,現代世界と日本社会の大きな構造的変化を見すえ,地域社会の対人援助を担う高度専門職の養成という課題に応えるべく,平成21-23年度に,文部科学省の組織的な大学院教育改革推進プログラムとして,「対人援助職の倫理的・法的対応力の育成――多文化共生社会における臨床実践力と実証的研究能力の向上」に取り組んできました。本専攻では,とりわけ専門職として必要不可欠な倫理的・法的対応力の涵養を重視してきました。現代医療倫理の教育はまず医学部で展開され,その後,看護学校・看護学部へと広がりました。しかし,それ以外の対人援助職の養成課程では,倫理教育はきわめて不十分か空白に近い状態があります。難しいモラルディレンマをはらんだケースで対人援助職が万が一対応を誤った場合,患者やクライアントに身体的・精神的な危害をもたらしたり,人権や尊厳を侵害しかねません。医学・看護学以外の分野でこうした問題への取り組みが不十分な状況を放置できないと,わたしたちは考え,いくつかのプロジェクトを立ち上げ,研究成果を大学院教育のなかで実践し,さらに教育プログラムを彫琢するという研究・教育の循環的な営みを展開してきました。本プログラムでは,これまでの実績をふまえて,本専攻において倫理的・法的対応力を涵養する教育を実質化し,地域社会のなかで対人援助を適切に導いていける指導的な専門職を養成する課題に取り組んできました。「組織的な大学院教育改革推進プログラム」のなかで専門職の倫理を主題にして取り組んだプログラムは全国でも本プログラムが唯一です。本プログラムは大学院教育のこの未開拓分野へのチャレンジです。本プログラムでは,グローバル化する対人援助の動向をも見すえ,国際的視野をもって取り組んできました。静岡県は在住外国人がとくに多い地域です。多文化共生社会をめざす営みのなかで,医療・福祉・教育などの分野で,外国人への対人援助の重要性は増しています。また,EPA(経済連携協定)に基づくフィリピン,インドネシア人看護師・介護福祉士候補の受け入れも始まっています。この制度自体は人手不足への対策ではないとされていますが,現在の人口動態からして,外国人によるケア人材の導入は避けて通れないと予想されます。これは対人援助分野の「開国」に匹敵します。この領域では,技術や経済分野におけるグローバル化とは異なり,言語や感情,文化や宗教が絡んだ複雑な倫理的・法的問題も生じ,比較文化論的な考察をふまえた対応が現場で求められてくるでしょう。外国人に対するケア,外国人によるケア,その両方の機会は増大していきます。本プログラムでは,時代の一歩先を見すえ,対人援助分野で国際性と多文化共生の視点をもった高度な職業人の養成を重視してきました。本報告書は,実質2年半のプログラム期間の活動報告です。プログラム期間はまもなく終了しますが,わたしたちは,この間の取り組みの成果をふまえ,グローバル化する地域社会の対人援助分野で適切な倫理的・法的な対応力を発揮し,人々の日々の安心・安全を支えることのできる指導的専門職を養成するため,引き続き教育改革を推進していきたいと考えています。1