対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

対人援助職の倫理的・法的対応力の育成 page 37/68

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対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

対人援助職の倫理的・法的対応力の育成多文化共生社会における臨床実践力と実証的研究能力の向上修士論文要旨EPAに基づく外国人介護福祉士受入れをめぐる教育的課題-静岡県における受入れ支援を通して見えるもの-天野ゆかり(ヒューマン・ケア学コース)キーワード:EPA,外国人介護福祉士,教育,自治体【はじめに】本研究テーマに関心をもつようになったのは,筆者自身がかつて臨床の看護師であったことと,現在介護福祉士養成校の教員をしているということに加え,1年間タイ王国で生活したという経験がきっかけとなっている。7年間臨床看護師として勤務した後,気分転換と休息を求めて,異文化へのあこがれもあり,以前から旅行をして馴染みの深かったタイでの生活を始めることを決断した。その時はほとんどタイ語も話せず,文字の読み書きもできない状況であった。語学学校に通いながら,少しずつ現地での生活に馴染んでいく中で,HIV孤児へのボランティア活動を通し,現地での医療や福祉の現場に触れる機会を得た。これらの経験を通し帰国した際,日本では外国人看護師や介護福祉士の受入れが議論されるようになっていた。帰国後,介護に関する教育に関わっていた筆者にとっては,まさに自分がかかわるべきテーマだと直感した。看護師としての経験,介護福祉教育への関与,東南アジアでの生活経験,新たな言語の学習,異文化での生活体験など,自身の経験した重要なキーワードとEPAに基づく看護師・介護福祉士の受入れのキーワードが,まさに重なっていると感じたからである。平成20年度より静岡大学大学院人文社会科学研究科臨床人間科学専攻に入学し,本研究テーマに本格的に取り組むことが可能となった。本専攻では,社会学,哲学・倫理学など,本研究を遂行する上で学ばなくてはならない分野の教員がおり,きめ細やかな指導を受けることができた。看護や介護分野の専門教育を受けてきた筆者にとっては,このテーマを医療や福祉の領域に関する問題として注目しがちであったが,本学での授業や各教員からのアドバイスにより,さらに幅広い視点で捉えなくてはいけないことを学んだ。本稿では,その修士論文の概要を紹介しながら,外国人介護福祉士の受入れについて静岡県という地域の取り組みから多文化共生の視点を交えて考察することとする。【研究の概要】1.問題と課題2008年より,経済連携協定(Economic PartnershipAgreement:以下EPA)によるインドネシア人看護師・介護福祉士候補者(以下候補者)の受け入れが始まった。さらに2009年からはフィリピンからの受け入れも始まり,現在までに751人の候補者が日本の介護現場で就労研修を受けている。急速な高齢化により医療や介護を必要とする人が増える一方,それを担う人材が不足しているという現状の中,EPAにおいて医療・福祉のケア人材受け入れが決まったことから,社会的にも大きな注目を浴びた。担当省庁である厚生労働省は,「あくまでも政府同士のEPA全体の判断として特例的に受け入れる」とし,国内のケア人材不足を埋めるための政策ではないことを強調している。一方,受入れ側の多くは,国内介護人材不足に対する懸念から,将来に備えた外国人受入れのテストケースだと捉えている。候補者受入れや教育に関するモデルが示されない中,各受入れ施設の責任において研修することを方針とする国に対し,現場からは戸惑いや不安の声があがっている。そのような状況を受け,日本語や国家試験の教育に関する支援を表明した自治体があった。特に東京都,横浜市,静岡県は,自治体独自の積極的な支援策を展開している。静岡県においては,2009年より,介護福祉士候補者24名を受入れている。またEPA以外では既に在日外国人131名が介護職員として福祉現場で就労している。このような状況を受け,静岡県は「外国人介護職員受け入れマニュアル」などを作成し,県内の候補者受け入れを積極的に支援する施策を展開してきた。また,県内の受入れ施設と県が連携し「ふじのくにEPAネットワーク」という組織を設立し,候補者の教育支援や政策提言などに着手しており,全国的にも珍しく画期的な取り組みとして注目を浴びている。このような自治体の積極的支援が,候補者の教育に対しどのような効果を与えるのかを35