対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

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対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

対人援助職の倫理的・法的対応力の育成多文化共生社会における臨床実践力と実証的研究能力の向上問介護,訪問入浴,デイサービス,グループホーム,小規模多機能,有料老人ホームなど,比較的小規模な事業所でも外国人介護者が就労している実態が明らかになった。県内の外国人介護職員131人の中にはEPA介護福祉士候補者17人の数も含まれるが,それを差し引いても県内で就労する外国人介護職員の数は増加傾向にあり,介護を担う重要な人材として静岡県も支援策を検討している。このような背景から現場の要請に応える形で候補者受入れの支援に対し県が積極的に関与するようになった。国内で初めて県の支援を受け,候補者受入れ施設等で立ち上げた「ふじのくにEPAネットワーク」は候補者の教育支援や政策提言を積極的に行っており,全国から注目を集めている。今後静岡県内から介護福祉士の合格者をどれだけ多く輩出できるかがその活動に対する評価の一つの指標となる。このような地域でのネットワークの形成や自治体を巻き込んだ活動が大きな成果を残せば,「静岡モデル」として全国に広がる可能性もある。この活動の成否が今後全国的な地域の支援のあり方に影響すると思われる。3教育担当者・候補者の語りからみえる教育的課題教育担当者は,介護現場の職員としての立場と,候補者を支える教育担当者としての立場の板挟みになっている。いかに介護チームの戦力として活躍してもらうかという一方で,いかに研修生として国家試験合格のための学習をすすめてもらうかとの葛藤の中にいる。教育担当者は,たとえ国家試験に合格しても,引き続き施設で就労するという施設の利益よりも,候補者自身の夢や希望を尊重した選択に任せたいとしている。通常の業務に加え,候補者の学習指導,生活管理,会議への出席など,多くの業務を抱えながら葛藤する教育担当者の立場の複雑さが明らかになった。候補者は,日本についての知識や介護についてほとんど理解がないまま来日している。しかし,日本での生活には比較的スムーズに適応していた。介護の仕事については,業務に対する考え方などに戸惑いながらも利用者の笑顔に支えられながら次第にやりがいを感じ始めている姿が見えた。候補者からは明確な日本での就労継続の意思は示されなかった。しかし,共通して国家試験に合格したいという強い思いがあり,業務と学習どちらも懸命に取り組んでいる姿が見えた。4.結論候補者の受入れにおいては,国家試験合格に向けてどのような支援をすべきなのか,その成功事例や経験値が何もないまま,受入れ施設ごと手探りの支援をしなければならない状態になっている。このような多大な負担を解消するには,施設レベル,教育担当者レベルという小さな単位ではとうてい不可能である。しかし,国という大きい単位では,地域の実情にあった支援は難しい。地域固有の事情や背景を考慮した支援を進めるためには,全国的組織で支援をするのではなく,静岡県のように,自治体を巻き込んで地域でネットワークを形成し,連携の強化,情報交換の促進,教育資源の共有化,政策提言などを進めることが,施設や教育担当者,候補者を孤立させない,有効な支援策になると考える。地域ごとのネットワークを形成しながら,それぞれがまた連携することで,大きな発言力となって国を動かすことも可能になるであろう。さらに,それぞれの民間団体がその専門性を活かしながら各ネットワークを支援すれば,有機的な教育支援が可能となる。今後は,以下のような候補者や施設を重層的に支える仕組みの構築を提案したい。他の自治体法務省介護福祉士候補者受入れ施設日本政府外務省厚生労働省経済産業省文部科学省関連団体送出し国国際厚生事業団(JICWELS)介護福祉士候補者受入れ施設支援体制静岡県介護福祉士候補者受入れ施設教育研究機関〈図1静岡県のEPA介護福祉士候補者・受入れ施設の支援体制概念図(2010天野作成)〉【今後の課題】本研究では,EPAにより受入れた外国人ケア人材の教育のあり方について,地域というフィルターを通して検討した。外国人ケア人材受入れの難しさは,その対象を人とするところにある。対人援助の現場では,マニュアル通りでは通用しない人と人の関係性を基本とした営みがある。そこに介護や看護と言った領域の専門性に加え,文化,習慣,言語といった要素が加わることで更に複雑となる。しかし,その違いが決してマイナスばかりに働くわけではない。異文化の人と関わることで,その違いを尊重したり,日本人にはない素晴らしさについても学んだりする機会となっている。そのような機会が増他の支援団体37