対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

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対人援助職の倫理的・法的対応力の育成

づく研究姿勢を身につける教育を重視する。量的調査のみならず文化差への感受性も重視した質的調査の力を養う。そのために調査法関連授業で実証的研究能力の向上を図る。それ以外の授業でも情報機器の活用や調査手法を指導し,院生自習室や社会調査室等に統計ソフトなども含めた情報基盤を整備していく。3.グローバル化するケアへの対応本プログラム課題は副題に「多文化共生社会における臨床実践力と実証的研究能力の向上」を掲げている。金融危機後の不況,その後の震災・原発事故により雇用が進まず国内労働力を活かしきれていない状況があるが,人口動態の基本が変わらないかぎり,やがて今以上に多くの労働力を外国から導入することが予想される。経団連の予想では,2055年までに外国人労働者1,800万人,うち医療・介護職約180万人を受け入れる必要があるという(日本経済団体連合会「人口減少に対応した経済社会のあり方」2008年)。静岡県は西部地区を中心に在住外国人が多い地域であり,外国人登録者数は2008年末で10万人を超えている。2008年5月には「指定都市市長会議in浜松」が開催され,多文化共生社会の実現に向けた指定都市アピールを発信している。2009年4月には在浜松ブラジル総領事館も開設された。こうした地域の特徴をふまえ,本プログラムでは,外国人への対人援助の問題に新たに取り組む。この問題では,これまで子弟の教育問題を中心に研究調査がなされてきた。現在,医療・介護・福祉の問題にまで広がっているものの,ようやく先進的な取り組みが始まったところである。例えば外国人患者が医療者を訪れた際,まず言葉の壁にぶつかる。浜松市にある聖隷三方原病院ではすでに数年前から通訳2名を配置し,スペイン語やポルトガル語,英語の問診表も作成して,この問題に対処している。さらに,言葉の先には,宗教や文化,生活習慣の違いからくるさまざまな軋轢や葛藤が予想される。これらは外国人に対するヒューマン・ケアのなかで生じる問題である。反対に,外国人からわれわれがケアされる状況がある。すでにEPA(経済連携協定Economic PartnershipAgreement)によるインドネシア人,フィリピン人看護師・介護福祉士候補者の受け入れが始まり,日本の医療・介護分野での研修が始まっている。これについてはさまざまな制度的な問題点が指摘されており,本制度の持続可能性が見えない(35-38頁参照)。しかし,将来,医療・介護職の多くを外国人に頼る事態が予想されるならば,「対人援助の開国」への決意が求められるであろう。そこでもケア文化やケア習慣の差異からくる軋轢や葛藤が予想される。多文化間ヒューマン・ケアの倫理的・法的・文化的・社会的諸問題を見すえた取り組みが必要である。このテーマは全国的に見ても一部で先進的な取り組みが始まったばかりである。われわれは地域的特性を活かして,対人援助における多文化共生の課題に取り組んでいく。6