文化人類学コースの教育

異文化間の対話と相互理解をめざす

近年、グローバル化の進展により異なる文化間の接触や衝突がますます増え、その結果、異文化間の対話や相互理解が、大きな課題として改めて浮上しています。文化人類学は、異文化との対話を通じて「人間とは何か」を問う学問です。「人間とは何か」という問いを追究する学問は文化人類学だけではありませんが、文化人類学の特徴は、グローバルな視点とローカルな視点を持ち合わせ、異文化の人々の声に耳を傾ける姿勢を重視しながら、あらゆる文化を研究対象とする点にあります。

グローバルな視点とローカルな視点

文化人類学は、過去と現在における地球上の人間集団を対象とし、人間が創造してきたあらゆる文化の比較研究をすすめるグローバルな視点を持つ学問です。それと同時に、文化人類学は、個々の人間集団が築きあげてきた個別の文化の具体的なありようと、その背後にある文化固有の論理を、フィールドワークにもとづくデータを中心として明らかにしようとするローカルな視点を持ち合わせた、いわば「複眼的」な学問です。

異文化の人々の声に耳を傾ける

文化人類学では、自ら「現場」におもむいて「現場」にどっぷりと浸るフィールドワークを通じて、異文化と対話し、異文化を理解しようとします。その中で抽象的な理論によって異文化の現実を切り取ることよりも、異文化の人々の声に耳を傾け、異文化の人々から学ぼうとする姿勢を重視しています。
なお、文化人類学コースの教育・研究の詳細については、下記のホームページに掲載してありますので、ぜひご覧ください。http://www.hss.shizuoka.ac.jp/shakai/bunjin/

 

五感を研ぎ澄ましてフィールドに行こう

山本達也 准教授

(文化人類学)

ある社会の考え方が他の社会と同じわけではない、ということは、特に、最近のニュースの中で痛感されることです。私たちが暮らす日本からはるか遠く離れた場所で起こっている出来事ですら複雑な回路を経て私たちに結びついている現在、自分たちの「常識」が通じる範囲に閉じこもって生きていくことはすでに不可能になっています。また、「自分たちの社会」と思っている場所の中にも、自分たちとは異なる文化を持った人たちが暮らしているかもしれません。異文化を知ること、異文化と自文化との関係を考えること、人間の文化とは何か、人間とは何か考えることは、現在、ますます必要となっています。また、それらのことを学ぶとき、文化人類学では、これまでに書かれたものを分析するだけでなく、自分の体を異文化におくことで学ぶ姿勢を大切にします。
文化人類学は、五感を働かせる学問です。文化人類学が重視するフィールドワークでは、聞く・触る・味わう・嗅ぐというすべての感覚が大切です。自分を丸ごとフィールドに投げ込んで、異なる文化の歴史や価値観、人々の生きざまを学び、人間の文化のもつ可能性について考えてみませんか。

フィールドワークで地球に学ぶ

畝重将矢 さん

文化人類学コース 2013年度卒業
北海道札幌市出身 北海道札幌手稲高校卒業 株式会社エイアンドティー(医療機器/医療関連)に就職

文化人類学は、「人間とは何か」ということを、あらゆる文化の内側と外側の双方の視点から研究する学問です。異文化を内側からの視点で調査する際に主に用いられるのがフィールドワークという手法です。わたしたち文化人類学コースには、3年次に「フィールドワーク実習」という授業があります。この授業では、フィールドワークの基礎から実践までを学ぶことができます。具体的には、1週間泊り込みで、静岡県内で現地調査をおこないます。みんなで協力し合って関連文献をまとめたり、インタビュー調査をして地域を歩いたり、という作業をします。インタビュー調査ではさまざまな世代の方々と交流することができ、コミュニケーション力や社交性が身につきます。このスキルは、就職活動の際に面接でもとても役に立ちました。フィールドワーク実習で完成させた論文は、毎年1冊の報告書にまとめられ、国立国会図書館や静岡県内の公立図書館に送付されるほか、インターネット上でも公開されます。学生時代の大きな成果のひとつとして、自分が調査したものが目に見える形になって公表されるということは、めったにできない体験ではないでしょうか。
インターネットが普及し、あらゆる情報を家にいながらにして手に入れることができる今では、自分の足を使って調査する文化人類学のやり方は時代遅れに思えるかもしれません。しかし、そんな時代だからこそ、生の声や自らの体験を通じて得た情報の価値を実感することができる文化人類学は素晴らしい、と私は感じています。