人間学コースの教育・研究の「理念・目的・目標」

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2001年4月

21世紀を切り拓くための広い学問性と豊かな人間味とをそなえた人材を送り出すこと、これが人間学大講座の教育と研究の目標である。私たちの社会をとりまく諸問題、すなわち高齢化をはじめとして、荒れる子供たちやストレス社会で生じている「生きる力」の脆弱化、高度情報化システムや人体改造を可能とする先端科学技術の進展といった問題群は、従来の価値判断の構造それ自体への反省を要求している。人間学大講座の教育と研究はこの要求に、人間の社会・心理・文化・歴史という社会学科の他の個別的な領域との対話を基礎としながら、人間を人間として受けとめ、人間の全体構造を考察し、具体的な問題に臨むことによって答えるものである。

人間学の教育活動

基礎的な文献研究に基づく教育はもちろんのこと、新聞・雑誌・インターネットというメディアを駆使するものに加えて、研究室から問題の現場へと踏みだして、広い意味で人間学に取り組んでいる人と接することも教育・研究の一つの軸と考えている。たとえば、芸術文化に関する授業の一環として、県内の芸術家や芸術文化政策に携わっている人を学生と共に訪問し、芸術文化と社会の関わりについての聞き取り調査や討論を行う授業も開講されている。卒業研究のなかには、留学中に行った面接調査を基礎資料として作成されたものもある。これらの教育・研究に関連して、「いのちとこころに関わる現代の諸問題の現場に臨む臨床人間学の方法論的構築」という課題により科学研究費補助金を得て、講座を越えた共同研究なども試みている。また、人間学大講座の公式ホームページならびに人間学独自のサーバーによるミラーサイトを開設し、研究内容・教育内容の紹介を行うとともに、「人間学を学ぶためのリンク集」を充実させて学生の学習に活用させ、卒論題目・要旨の公開を含めて、学生・卒業生の交流の場を作るなど、研究・教育に活用している。さらに、卒業生を中心として「静岡大学哲学会」(現在の会員数は約150名)を組織し、毎年学会を開催し、研究誌『文化と哲学』をこれまで17号発刊している。

具体的な教育課程としては、3年次前期までの「人間学概論」「人間学学説史」「哲学概論 I ・ II 」などの基本的な講義および基礎的な演習を踏まえ、3年次後期の「人間学演習?」(新カリキュラムでは「人間学特別研究」)において学生各自の研究テーマの確立へと向かい、4年次の「卒業演習 I ・ II 」において卒業論文を完成させることを通じて、上述の教育目標の達成へと向けて課題探求能力の育成を図っている。特にこの数年間「人間学概論」を人間学講座のスタッフ数名で分担することにより、多角的・総合的なアプローチを試みてきが、2000年度においては上述の「いのちとこころに関わる現代の諸問題の現場に臨む臨床人間学」という試験的な構想の下で「臨床人間学」という講義を行った。これらの通常の授業に加え、人間学大講座として9月末に「卒業論文中間発表会」を、そして2月中・下旬に「卒業論文発表会」を行っている。それらの会には2年次および3年次学生の参加も必須とし、学期間のスムーズな移行および履修分野としての人間学教室の一体性に配慮している。なお、「卒業論文発表会」にあわせて『卒業論文・修士論文要旨集』を学生全員に配布している。各論文の要旨と共に教官からの贈る言葉や開講科目などの研究室案内を掲載しており、2000年度までに第7号を発行した。

教育面での改革課題と展望

前述の科学研究費補助金・基礎研究(C)「いのちとこころに関わる現代の諸問題の現場に臨む臨床人間学の方法論的構築」には、社会心理学コースの矢吹教授も参加されており、その点では「社会学科の他の個別的な領域との対話を基礎とした教育と研究」という理念が実現しつつあるといえる。学生の教育という面から見ても、この科学研究費を使用して、大学院生・学部学生を交えた研修旅行を催したり、また研究の遂行そのものにも大学院生・学部学生の協力・参加を求めてはいる。しかし、このような講座を越えた共同研究の成果が講義・演習といった通常の教育活動のなかに還元されるまでには至っていない。人間学大講座としての特色あるの研究を軸として、しかも講座を越えた共同研究を図りつつ、それらの研究に学生を呼び込むと共に、その成果をカリキュラムに反映させていくという努力が必要であると思われる。

また、「臨床人間学」をはじめとする新しいカリキュラムが始動することに伴い、これまでとは異なった形態の授業が導入されつつある。それらの科目については、新たな配慮を行う必要がある。特に、インタヴュー ・交流・調査・フィールドワークという対面的な関係のなかで、それまでに学んだことを問題の現場で磨きながら、同時に学びとっていくという手法に関しては、人権及び利益の保護の取り扱いについて十分配慮する必要があることから、対策・措置などの基本的な手続きを整備し、周知させなければならない。

地域社会が直面する諸問題、公的な共同体の抱える課題、地球規模で露呈しつつある矛盾などの危機的状況を、個別諸科学とのに立ち向かう学問の在り方が求められている。

  • 本文は、「外部評価」への準備として作成された文書から、人間学大講座に関わる部分のみを抜粋したものです。