静岡大学 人文社会科学部 社会学科 人間学コース 文化人類学分野のウェブサイトです
文化人類学@静岡大学Cultural Anthropology at Shizuoka University |
学生の声 Students' Voices
「フィールドワークで初めて分かった過疎地域の可能性」
(『フィナンシャルジャパン』2011年12月号掲載エッセイ→実際の誌面はこちら)
「文化人類学って何をやるの?」。大学に入ってから、私が度々受ける質問だ。
文化人類学とは、人間を取り巻くありとあらゆる文化や社会、そこに存在する多様な価値観の発見を通して、「人間とは何か」を追究する学問であると理解している。人間の営みに関わることであれば何でも対象になってしまう。自分とは異なる文化や社会を知ることで、自身の存在や文化を新しい目線で見つめ直すことができるし、世界も大きく広がる。
今年6月、私が所属する文化人類学コースの学生が、静岡市葵区井川本村へ行き一週間現地に泊まり込み、フィールドワークを行った。テーマは「少子高齢化・過疎化」だ。
私たちが訪れた井川本村の平成22年度末現在の総人口は631人、世帯数は341。現在村内には幼稚園、小学校、中学校が一つずつあり、私たちのフィールドワーク当時の幼稚園児~中学生の数は合計で15人であった。井川本村には高校がないため、中学校を卒業すると子どもたちはみな静岡市の中心部などへ出ていき、その後井川に戻って定住する子どもはあまりいないという。人口最盛期である昭和30年代には総人口が5000人を超えることもあったが、総人口も子どもの数も年々減少し、少子高齢化・過疎化が進んだ今の状況に至っている。
私が井川本村を訪れて感じたのは、「また来たい!」と思わせるほどの、都会とはまた違った心地よさだ。その一つが人の温かさである。調査場所までトラックの荷台に乗せて送ってくれたおじいさんや私たち学生のために手作りのおはぎを差し入れてくれた旅館の方々など、心温まる出会いがあった。また、井川にいる子どもたちは自分たちの地域が大好き、ということも感じた。子どもたちが愛着を持ち、「また井川に戻ってきたい。定住はできなかったとしても、たまには遊びに帰ってきたい」という子どもの声が聞こえる地域は、地元出身者にとっても都会で生まれ育った人にとっても「もうひとつの居場所」になれる地域なのではないだろうか。そんな地域の息を、途絶えさせてはけない。
過疎化地域への移住者を増やすために、田舎の暮らしを少しの間体験できる企画をもっと増やしてはどうだろうか。田舎の「らしさ」が、神奈川県で育ち「都会っ子」と言われる私のような若者にとっては良くも悪くも新鮮に映るだろう。私自身、フィールドワークに行く前は「過疎」という言葉に「さびれていて、地域や人々全体に活気がない」というイメージを持っていた。しかし、地元の昔話や名産品など「観光資源となるものを持っている」と思った。この企画が定住に結び付かなかったとしても、田舎の「現場を知る」ことは、人の移動において大きな価値を持つ。まずは来てもらい地域のことを知ってもらう。そのことが、私がフィールドワークを通して過疎化地域に必要であると考えたことである。