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人間学コース

社会倫理学演習風景

人間学コースの教育
―人間はどこから来て、どこへに向うのか?

 いま私たちは非常にストレスの多い社会のなかで、さまざまな悩みを抱えて暮らしています。子供たちの世界にもさまざまな問題行動が見られ、そこに大人社会の縮図が映し出されてもいます。科学技術が進歩し、高度情報化社会が実現し、生命操作までが可能な時代になりましたが、私たち人間はいまどこに向かって進んでいるのでしょうか?
 人間学はこのような疑問に対して、「人間とは何か」という根本を見つめ直すところから迫ります。広大な宇宙を相手にする宇宙科学も、ミクロな生命現象を扱う遺伝子工学も、みな「人間とは何か」という問いと無関係ではありません。多様な学問方法を駆使し人間の根本に切り込むスリリングな知の格闘。それが人間学です。
 人間学コースでは古典と呼ばれる文献を通じて偉大な過去の精神的創造に向き合うとともに、さまざまな現場へ踏み出すフィールド教育も実践しています。例えば芸術文化の授業では、芸術家や博物館・美術館での聞き取り調査を行い、身体論の授業では、気功や太極拳、能楽、韓国舞踊の専門家を招いて実演してもらい、アジアの身体について考えています。詳しくは
http://www.hss.shizuoka.ac.jp/
shakai/ningen/ningen-j.html
を参照してください。人間学のスタッフの最近のNewsや静岡大学哲学会の活動、そして、卒業論文の題目などを公開しています。


専門教育カリキュラム

4年次 卒業論文、卒業演習
2~4年次 哲学概論、臨床人間学、応用倫理学、東西宗教思想、芸術文化思想、現代ヨーロッパ思想演習、宗教と社会演習、アジア・日本文化論演習、哲学演習、論理学演習、人間学演習、思想のことば、ギリシア語、ラテン語、人間学の調査と探求、人間学論文技法演習、人間学特別研究など
1年次 人間と社会、人間学概論、社会学概論、心理学概論、文化人類学概論、歴史学概論、フィールドワーク基礎演習
(注意) ・社会学科の他コースの科目も選択科目として受講できます。
・人文学部の他学科の科目も自由専門科目として受講できます。
青字は社会学科の5コースに共通です。



山下秀智 教授
(宗教思想)
宗教と社会

 私はこれまで、デンマークの宗教思想家キェルケゴールと、日本の浄土真宗の開祖である親鸞の思想を研究してきました。前者は実存哲学の出発点などと言われていますが、実際は、そのようなレッテルでは充分に彼の思想を汲み尽くすことはできません。やはりキリスト教の大きな改革運動の中に、しっかりと位置付けなければならないと思っています。代表的な彼の作品『死に至る病』は、「絶望」という非常に否定的なテーマを問題にしていますが、それは、単に否定的なものに留まらずに、信仰への飛躍を惹き起こす重要な契機でもあります。親鸞もまた、日本思想にはめずらしく否定的な「罪悪深重・煩悩熾盛」(『歎異抄』にある言葉)ということをいわゆる信心への跳躍板として位置付けています。この否定的なものは、必ず自我の崩壊を惹き起こしますが、宗教というと、どうもその辺りまでの理解で留まってしまいます。私は、そこからどのような社会との関わりが生じるのか、非常に関心をもっています。解放の神学や、インドのアンベドカルの思想等がそうしたテーマと関係してきます。ドイツ出身でアメリカで活躍したティリッヒの立場が、「間(はざま)に立つ神学」と言われているように、私も諸科学、諸立場の間に立って、現代が抱える困難な課題に、私なりの一筋の道を見出せればと思っています。

「人間」へのアプローチ
福士麻子さん
(人間学コース3年)
 「哲学?倫理学?…何だか難しくて、よく分かんない。」このように感じる人は、少なくないかも知れません。しかし、人間学が取り扱う問題はけして難しいだけのものではありません。はるか昔から、「人間とは何か?」が問われ続けてきました。今もその探求が終わることはありません。歴史・スポーツ・音楽…何でもいいです。自分の興味のある視点から、「人間」について考えてみませんか?様々な思想に触れることで、人間・そして社会、世界に対する新たな発見や驚きがあるはずです。人間学は、自らの思想を豊かに膨らませる楽しさを教えてくれます。

教員の主な専門分野及び研究テーマ
山下秀智 教授 (宗教思想)
キェルケゴールと親鸞の思想を中心にした宗教的実存の展開。近年、唯識思想や西田哲学にも関心をもつ。
松田 純 教授 (社会哲学)
社会の歴史的な変動と思想のダイナミックな関わりを考察し、現代の最先端技術がもたらす倫理問題を検討。
浜渦辰二 教授 (現代思想)
いのちとこころを包括する「ケアの人間学」にとり組んでいる。20世紀の扉を開いた哲学である現象学を土台に、心理学、精神医学、脳科学、看護学などとの関わりにも携わっている。
上利博規 教授 (芸術思想)
現代思想(アドルノ、デリダなど)を手がかりに、現代文化の変容と芸術・芸能など表現文化の可能性を探る。その他、アジア、静岡の芸術・芸能文化の研究、臨床的な芸術療法の実践的な研究も行っている。
田中伸司 教授 (倫理学)
プラトンの対話篇の研究を基盤に、応用倫理学やフェミニズムの展開をめぐり規範倫理学的およびメタ倫理学的に検討している。