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学生の声 Students' Voices

「長かった大学生活の中で」

 私は大学生活の中で、文化人類学を説明する際によく使われる「当たり前を疑う」ということを、身をもって経験できました。そして、その経験は大学生活だけでなく、就職などのこれからの人生を考える上で、重要な財産となりました。

 私が静岡大学に入学したのは2020年です。大学3年次前期のフィールドワーク実習Ⅰを終えたあと1年間休学し、大学の交換留学制度を利用して台湾に行きました。その後復学し、合計5年間の学生生活を送りました。なんとなく文化人類学分野に進むことを決めた大学2年生の頃、世の中にはまだ新型コロナウイルスの影響が残っていました。大学1年間が自分の思っていたものとは全く違うものになってしまい、同級生たちにも皆焦る気持ちがあったと思います。しかし徐々に対面での授業が増えていき、フィールドワーク実習への準備が進むにつれ、やっと「文化人類学分野に進んだんだ」と感じることが増えてきました。

 フィールドワーク実習では静岡市清水区蒲原に通い、調査を行いました。当初予定していた宿泊での調査ができなくなり、毎日朝早い時間に起きて電車に乗ることは大学に入学してから初めてのことだったので、かなり大変でしたが、同じ分野の友人たちとここまで長い時間を一緒に過ごすことは初めてだったので、かなり楽しめました。自分1人でテーマを見つけるところからインタビューや報告書作成を行うのは初めてだったので、かなり苦労しましたが、友人たちと情報を共有したり、先生方にアドバイスをもらったりすることができたのでなんとか形になったと思います。このフィールドワーク実習での経験から、誰かにインタビューして、自分の全く知らない話を聞くことの楽しさや難しさを、身をもって知ることができました。

 台湾への留学を決めたのは、文化人類学の授業がきっかけでした。海外や日本の様々な地域の文化や慣習について学び、生まれた場所や時代が違うだけでもそれらは全く異なっていること、そして自分にとって「当たり前」であることが、すべての人にとってそうであるとは限らないことを知りました。そこで、私自身も今までとは違う環境の中で生活してみたいと考えるようになりました。前期のフィールドワーク実習Ⅰを終え、2022年の後期から台湾へ行きました。直前までコロナでビザが取れるかも分からず、フィールドワークの報告書も完成していない中での渡航でしたが、なんとか友人と先生方の協力のおかげで留学を無事に終えることができました。実際に外国人として海外での生活を体験できたことは、言葉に言い表せないほど貴重な体験になりました。国が違えばルールも違うし、考え方も違います。憲法の授業で「自分の国の法律について」というテーマでプレゼンを行った時、日本の少年法について紹介すると、他の国の留学生から「自分の国では犯罪を犯すと10歳から成人と同じように扱われるよ」と言われたことが印象に残っています。

 日本から離れた環境で暮らす中で、自分の中の「当たり前」は世界共通のものではなく、その違いが時に衝突を生むことがあることを改めて実感しました。それでも互いの文化の違いを理解し、尊重し合うことの大切さを知ったことで、この留学には私にとって大きな意味があったと思います。

 卒業論文では自分の母がボディビルの大会に出場していたことから、ボディコンテストに出場する女性たちをテーマに調査を行いました。ここでも自分自身の中に「女性は細いほど美しい」という考えが当たり前として存在していたことに気づきました。インタビューだけでなく、実際に大会を見に行って会場の空気を感じることもありました。筋肉の美しさを競う大会にもかかわらず、女性ならではの美しさや華やかさを求められたりすることに葛藤を感じながらも、自分らしい美しさを求めて鍛え続ける女性たちの姿は印象的でした。

 私はみんなより少し長い大学生活を送りましたが、5年間の全てが自分にとって意味のあるものだったと思います。コロナ禍に入学したからこそ留学に行くことを決めて、留学に行ったからこそ自分の進路について深く考えることができました。大学生活を通して経験した「当たり前を疑う」ということは、これからの人生で何度も必要になると思います。留学の手続きや報告書の作成などで先生方や友人にはたくさん迷惑をかけましたが、おかげで充実した大学生活を送ることができました。私の経験が少しでも役に立てば幸いです。

(愛宕 澪・2020年入学)