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学生の声 Students' Voices

「文化人類学分野での学び」

 ここでは、文化人類学を専攻した理由、3年次・4年次での研究テーマや実際の調査、2年間の研究を通して得たものについて書いていきます。

 私が文化人類学を専攻した理由は、身近にあるものや、生活する中で興味関心が向くもののすべてが研究テーマになりうる、自由度の高さに魅力を感じたことです。私は、他者の暮らしや考え方を聞くこと、人々の繋がりを見ることが好きです。1年次に行なったフィールドワーク基礎演習において、他者のライフストーリーをたどっていくことに面白さを感じ、それが文化人類学に興味を持つ一番はじめのきっかけとなりました。2年次には、文化人類学分野の卒業論文発表会を見に行き、それぞれの先輩方の興味関心からくるテーマの幅広さを実際に見て感じ、文化人類学分野に進むことを決めました。

 そして、文化人類学分野に進み、3年次の静岡市清水区蒲原におけるフィールドワーク実習が始まりました。私の興味のあるテーマは「居場所」や「人々の繋がり」でした。そこで、蒲原の人々が集まるお店を調査してみたいと考え、蒲原に下見に行き、居酒屋やカフェなど調査対象となるお店を探しました。その中で見つけたのが、「酒場岩科」という居酒屋でした。最初は緊張しながら1人でお店に入ってカウンター席に座りましたが、店主の奥さんや常連客の方が話しかけてくださり、徐々に緊張がほぐれていきました。「これ食べてみなよ」と注文した料理を一口くれたり、私を指して「うちの孫」と他のお客さんたちに冗談を言ったりと、蒲原の人々の温かさに触れました。こうして酒場岩科を調査することを決め、5日間のフィールドワークでは、インタビューを通して酒場岩科の歴史、店員や常連客の体験談や想いを聞き、参与観察ではインタビューでは分からない、実際の会話や空気感を観察しました。参与観察では、その場に溶け込み、あらゆる物や人を注意をもって見て、聞き耳を立て、他愛もない会話から情報を見つけていくという作業にとても苦労しました。しかし、参与観察に力を入れたことは、後の報告書の執筆作業に大きく役立ったと思います。執筆作業は多くが1人での作業だったため、悩んだり行き詰まったりすることも多かったですが、担当の先生に相談したり質問することで解消することができ、無事に報告書を完成させることができました。

 フィールドワーク実習の報告書が完成し、4年次に行う卒業研究の準備が始まりました。研究したい内容は3年次に引き続き「居場所」や「人々の繋がり」でした。より馴染みがある場所で調査したいと考え、地元・前橋にある古い商店街を選びました。帰省した際に下見に行き、3年次と同様にさまざまな場所を訪れ、見つけたのが「服屋xiaoそなちね」という古着屋でした(冒頭写真)。閉業した老舗の建物や看板をそのまま残した場所で、私と同い年の大学生が新たに古着屋を開業したことに興味を持ち、調査対象に決めました。約半年間をかけた調査では、通話でのインタビューから始まり、夏休みには、対面でのインタビュー、店舗での参与観察、長野県でのイベント出店での参与観察などを行いました。インタビューでは、店主や常連客の他に、建物のオーナーやまちづくりを行う市役所職員、商店街の他の店主など幅広くお話を聞き、この場所が人々にとってどのような場所なのかを考察していきました。調査地が遠方であったため計画をたてるのが難しかったり、予期せぬ出来事があったり、調査を終えないまま論文執筆を進めたりと、とても不安は大きかったですが、論文を書き終えたときの達成感は大学生活で一番大きいものでした。何よりも、あらゆる世代の人と出会い、お話を聞き、親しくなれたことが、私にとって幸せな経験でした。

 2年間の研究を通して、自分の暮らしの可能性を広げることができたのではないか、と思います。3年次の調査では、縁もゆかりもない場所に1人で飛び込む勇気、歳の離れた方々から得られた新たな人間関係や居場所のあり方、4年次の調査では、馴染み深い場所を改めて見返していく視点、同世代の活躍・挑戦する姿、さまざまなことを学んだり身につけたりすることができました。これらは、人生の岐路に立たされたとき、新たに選択肢を増やしてくれるだろうし、暮らしの中で新しい楽しみを見つける術を教えてくれたと思います。そして、2年間「居場所」や「人々の繋がり」をテーマに研究してきましたが、これからも私の興味関心はここにあると思います。論文を書くときはおそらくもう来ないとは思いますが、暮らしの中で常にアンテナを張って、探求していきたいです。

 最後に、私が2年間、前のめりに研究をしてこれたのは、自分が本当に興味を持っているテーマを選ぶことができたからだと考えています。そのためには自分が何に面白さ、楽しさを感じるのかを知ることがとても大事だと思います。この体験談が少しでも参考になれば嬉しいです。

(重原 安奈・2020年入学)