ホーム > 学生の声> 山崎紗和子さん

学生の声 Students' Voices

「文化人類学分野での学び」

 こんにちは!ご覧いただきありがとうございます。ここでは、文化人類学(以下、文人とする)を選択するまでの経緯、調査から感じた文人の面白さとそこから得た学びを紹介させていただきます。

 まず、文人を選択するまでの経緯です。私は、入学時には社会学分野に進もうと考えており、文人についてはホームページで名前を見たくらいでほとんど知りませんでした。「文化」、「人類学」という言葉で、日本以外の国の民族調査をする学問と思っており、自分のやりたいことと違うと思い込んでいました。しかし、文人の先生が担当する講義を受ける中で、「他者の生き方から自分の当たり前を問い直す」という文人のテーマに興味を持ったこと、先輩の卒論の題目が部活動やサークル、飲食店など身近なものであると知り、「文人=海外」という認識が変わったことで文人が私の分野選択の候補になりました。そして、「統計的に他者の傾向を見るのが社会学、統計はこう言っているが一人一人は違うのではないかと疑問をもち個々に焦点を当てるのが文人」という話を聞いて、自分は後者をやりたいと思い、文人を選択しました。

 次に、調査から感じた文人の面白さを2つ紹介します。

 1つ目は、人との会話が調査になることです。文人では、3年時にフィールドワーク実習というものを行います。この実習では、それぞれがテーマを設定し、そのテーマに関係のある人に個々で話を聞きに行き、最終的に報告書としてまとめます。例年は宿泊を伴うのですが、私たちは、コロナの影響で宿泊をせず、久能山東照宮の麓である静岡市駿河区久能地区で5日間実習を行いました。私は、久能の名物である石垣イチゴを育てているイチゴ農家の方に話を聞きました。初めは、質問をして相手が答えてまた次の質問に進むといったように質疑応答といった感じで、話が途切れ無言の時間ができることが多かったです。しかし、3日目に、あるイチゴ農家さんへのインタビューが終わってすぐに、「今のインタビュー良かったかも!」「この話を報告書に載せたい!」と思いました。この時の嬉しさ、興奮は今でも鮮明に覚えています。上手くいったと思えた方のインタビューを振り返ると、質問をして答えてもらうというのは同じなのですが、質疑応答というよりも会話といった感じで、テーマとあまり関係がない話もありました。その分、最初に比べて無言になるタイミングが少なく、会話が楽しくてあっという間に1時間半が経っていました。このときと最初の違いは恐らく、インタビューに慣れて相槌や話の掘り下げが自然にできたことで話しやすく感じてもらえたことにあるかなと思います。もちろん、人同士なので互いの相性もありますが、相手から聞き出すのではなく、相手と会話をすること、自分だったら聞き手がどんな人だったら話したいかを考え実践し、会話が弾みたくさんの話を聞けたという経験は文人ならではの面白さだと感じています。

 2つ目は調査対象者との出会いです。私が報告書に載せた人の1人との出会いは、同じようにフィールドワークをしていた文人の同級生2人がイチゴのスイーツを食べに行き、名刺をもらってきてくれたことがきっかけでした。この名刺をくださった人が、イチゴ狩り発祥の農園の方と知り合いで、私に紹介をしてくれたことで発祥の農園の方のお話を聞くことができました。このような予期していない出会いが、調査の中で多々ありました。私はキッチンカー事業者と露天商を卒論のテーマにしたのですが、調査対象者の多くが別の対象者からの紹介でした。ここで少し文人特有の調査方法である参与観察についても紹介させてください。参与観察とは、調査対象のコミュニティに実際に参加しながら、話を聞くだけでなく、行動や自分ではなく他の人との会話などを観察する方法です。卒論では、この参与観察においても予期せぬ人との出会いがありました。浜松のイベントでのキッチンカー事業者の参与観察中、この事業者と別のキッチンカー事業者が話していました。そこに、ダメ元で協力依頼をしに行ったところ、快諾してくださった方がいました。この方とは、浜松の参与観察に行っていなければ一生会うことが無かったと思います。結果、後日お話しをお伺いでき、卒業論文の一部にさせていただきました。このように、対象者から別の対象者を紹介してもらったり、タイミングがかみ合い偶然に調査対象者が見つかったりするケースが何度もあり、これは実際に文人の調査手法として有効だそうです。事前にアポを取り、話を聞くだけではない様々な出会いが調査に活きる経験ができることは文人の面白さだと感じています。

 これらの文人での経験から自分が学んだことは、人生は予想と違っていても良いということです。文人を選択したこと、フィールドワークにおける調査対象者との出会い、報告書の内容、卒論におけるキッチンカーの人との出会いなど、ほとんどが、初めは全く想像していないものでした。しかし、私はそれでよかったと思っています。予想通りに社会学に進んだとしても他の貴重な経験もあったとは思いますが、私は予想外だった文人での経験がとても大切なものになっていますし、報告書も卒論も、予想外の出会いが無ければもっとつまらないものになっていたでしょう。人生と言ってしまったので大げさにも感じるかもしれませんが、近年、ライフプランの設計、将来のためになることのように、未来を考えてそれに向かって行動することが求められることが多く、自分もずっとそれが大切だと思っていました。しかし、文人での経験を経て、予想外を楽しむことも、人生を豊かにしてくれるのかなと思えるようになりました。このように、自分の生き方に対しての寛容さと広い視野を与えてくれたのが文人だなと感じています。

 以上が、私の文人体験談になります。静大の社会学科の方で、分野選択に悩んでいたら、少しでも文人に興味があれば、まずは授業をとってみてください!私のように、予想外に面白いと思えることもあるかもしれません。どの分野に進んだとしても最後にこの分野で良かったと思えるように願っています。それ以外の方で読んでくださっている方がいれば、この話が少しでも文人という学問や静大の文化人類学分野の学びに興味をもってもらえるきっかけになれれば幸いです。

(山崎 紗和子・2021年入学)