人間はどこから来て、どこへ向うのか?
いま私たちは非常にストレスの多い社会のなかで、さまざまな悩みを抱えて暮らしています。子供たちの世界にもさまざまな問題行動が見られ、そこに大人社会の縮図が映し出されてもいます。科学技術が進歩し、高度情報化社会が実現し、生命操作までが可能な時代になりましたが、私たち人間はいまどこに向かって進んでいるのでしょうか?
哲学・倫理学はこのような疑問に対して、「人間とは何か」という根本を見つめ直すところから迫ります。広大な宇宙を相手にする宇宙科学も、ミクロな生命現象を扱う遺伝子工学も、みな「人間とは何か」という問いと無関係ではありません。多様な学問方法を駆使し人間の根本に切り込むスリリングな知の格闘。それが哲学・倫理学です。
哲学・倫理学分野では古典と呼ばれる文献を通じて偉大な過去の精神的創造に向き合うとともに、さまざまな現場へ踏み出すフィールド教育も実践しています。例えば芸術文化の授業では、芸術家や博物館・美術館での聞き取り調査を行い、身体論の授業では、気功や太極拳、能楽、韓国舞踊の専門家を招いて実演してもらい、アジアの身体について考えています。
詳しくはhttps://www.hss.shizuoka.ac.jp/shakai/ningen/を参照してください。哲学・倫理学分野のスタッフの最近のNewsや静岡大学哲学会の活動、そして、卒業論文の題目などを公開しています。
身近な疑問から始まる知的探求
尾崎 賛美 講師
(哲学)
皆さんは「哲学」と聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか。分厚くて難しそうな本とにらみ合いながら、抽象的なことを考える学問といったイメージでしょうか。必ずしも間違っているわけではありませんが、それだけに尽きるものでもありません。哲学の問いは、思いのほか私たちの身近なところから始まっていたりします。たとえば、「自分って本当に存在しているのだろうか」といった疑問を多くの人が一度はもったことがあるのではないでしょうか。実はこの問いは、哲学者たちが何世紀にもわたって取り組んできた重要なテーマでもあります。
他方でまた、哲学は私たちがそれについて考えなくても生きていけそうな、また考えたとしても答えの出なさそうな問題ばかり論じているように思われるかもしれません。こちらも、あたらずとも遠からずではありますが、しかし、考えても簡単に答えが出せないからといって、こうした問題が考えるに値しないものとなるわけではありません。たとえば皆さんは、自分の生きる意味について考えたことはあるでしょうか。考えたとしてもたいていの場合、「考えても答えは出ないし…」と言って、いちいち立ち止まらないかもしれませんよね。ですが、それは本当に考えるに値しない問題でしょうか。自分の中の切実な問いが、それにもかかわらず、取るに足らないもののように感じられるのは、もしかするとその問いを考えるための言葉にまだ出会っていないだけだからかもしれません。哲学という学問は、こうした私たちの身近なところにあるにもかかわらず、日々の生活の中では忘れ去られてしまうような問いに光を当て、先達者たちの叡智と言葉とを借りながら考えていく営みとして特徴づけることができると思います。
現代は便利なもので、何か分からないことがあっても、ネットで調べればだいたいのことは誰かが答えてくれます。しかし、私たちが生きていく上で本質的な事柄は多くの場合、すぐに答えの見つかるようなものではなく、むしろ私たちひとりひとりが時間をかけて向き合っていかなければならないものです。もちろん、その道のりを独りで歩む必要はありません。いまだ言語化すらできない思いに言葉を与え、その問い方を教えてくれるエキスパート、すなわち哲学者たちが、皆さんの探求のパートナーとなるでしょう。何世紀にもわたって時代の批判に耐え抜いてきた彼らの言葉が、自分の問いの先にある、これまで想像さえしていなかった景色へと皆さんを連れて行ってくれるはずです。その景色を目にするとき、皆さんはきっと自分の問いがけっして些細なものではなかったことに気づくでしょう。また、静岡大学には皆さんの学びを共に深めていく仲間たちや、それを支える教員もいます。せっかく大学で学べる機会です。私たちと一緒にこの知的探求へと一歩踏み出してみませんか。
“Where every thought is a stepping stone to deeper wisdom”
(様々に思いめぐらすことが、より深い知への足がかりとなる場)
ジョフィ ナタニアさん
哲学・倫理学分野 3年生
ある行為が正しいか間違っているか、意味のある人生を送るとはどういうことか、考えたことはありますか?哲学・倫理学分野では、このような大きな疑問に飛び込み、道徳や正義、さらには世界のあり方に至るまで、私たちがどのように考えるべきかという思考の枠組みを探求してきた哲学者や倫理学者たちの思想を学びます。哲学や倫理を学ぶことは、単に読書をするだけではありません。他の学生と活発なディスカッションを行い、自分の考えをあらためて吟味することで、新たな洞察を得ることができます。また、哲学・倫理学分野では、物事を批判的に考える態度や、複雑な問題を解決する方法を学ぶこともできます。哲学の醍醐味は、世界の見方を変えるようなアイデアに出会った瞬間に味わうことができると思います。法律、政治、科学、日常的な意思決定など、どのようなテーマに興味がある方でも、この分野での学びを通して、思慮深く自信を持って問題に取り組むことができるようになります。
*<旧>人間学コースは、2020年4月から<新>人間学コース哲学・倫理学分野となりました。


