フィールドワークを通して「当たり前」を見直す
⽂化⼈類学は、フィールドワークを主な研究⽅法とする学問です。フィールドワークは、調査地に⼀定期間滞在するなかで、そこに住む⼈の暮らしを知る研究⽅法です。⾼校までに学ぶ知識が、社会を上から⼤きく掴み取って得たものだとしたら、⽂化⼈類学はその逆のやり⽅で社会をまなざします。フィールドワークを通して⼈の暮らしに寄り添いながら、そこに根付く制度や慣習、⼈と⼈、または⼈と⾃然とのつながりについて明らかにします。そして、⾃分と違う⽣き⽅や考え⽅があることを知り、⾃分が当たり前と思っていた価値観や常識を⾒直し、今とは違った⽣き⽅の可能性について考えます。

幅広くテーマ設定が可能
⽂化⼈類学では、「フィールドワーク実習」という授業のなかで、静岡県内の調査地に合宿しながら、5 ⽇間のフィールドワークをします。実習には3 年⽣が参加し、⼀⼈⼀⼈ がテーマを決めて地域の⽅に聞き取り調査をおこないます。調査後は、数か⽉かけて資料を分析し、報告書をまとめます。実習を通して⽂化⼈類学の研究⽅法を⾝に着けた後は、4 年次の卒業研究が待っています。卒業研究では、4 年⽣が⾃らテーマを設定し、調査地を決め、フィールドワークを実施し、卒業論⽂を執筆します。これまで提出された卒業論⽂は、災害や介護といった社会的に関⼼の⾼いテーマに取り組んだものから、ゆるキャラやアニメの聖地巡礼といったサブカルチャーに注⽬したものまでさまざまです。このように⽂化⼈類学は、研究⽅法をしっかり押さえれば、幅広くテーマを設定することが可能な学問といえます。
⽂化⼈類学分野の教育・研究の詳細については、下記のホームページに掲載していますので、ご覧ください。https://www.hss.shizuoka.ac.jp/shakai/bunjin/
五感を研ぎ澄ましてフィールドに行こう

山本 達也 教授
(文化人類学)
ある社会の考え方が他の社会と同じわけではない、ということは、特に、最近のニュースの中で痛感されることです。私たちが暮らす日本からはるか遠く離れた場所で起こっている出来事ですら複雑な回路を経て私たちに結びついている現在、自分たちの「常識」が通じる範囲に閉じこもって生きていくことはすでに不可能になっています。また、「自分たちの社会」と思っている場所の中にも、自分たちとは異なる文化を持った人たちが暮らしているかもしれません。異文化を知ること、異文化と自文化との関係を考えること、人間の文化とは何か、人間とは何か考えることは、現在、ますます必要となっています。また、それらのことを学ぶとき、文化人類学では、これまでに書かれたものを分析するだけでなく、自分の体を異文化におくことで学ぶ姿勢を大切にします。
文化人類学は、五感を働かせる学問です。文化人類学が重視するフィールドワークでは、聞く・触る・味わう・嗅ぐというすべての感覚が大切です。自分を丸ごとフィールドに投げ込んで、異なる文化の歴史や価値観、人々の生きざまを学び、人間の文化のもつ可能性について考えてみませんか。
文化人類学で得たことは私の武器です

天野 浩二 さん
文化人類学コース 2015年度卒業
愛知県棚郡出身 東海南高校卒業 静岡市役所
文化人類学はフィールドワークを重視する学問です。インタビュー相手からどんな学問か尋ねられると「文化や生活を記述し、残していく学問です」とよく答えます。もちろんそれがすべてではありませんが、3 年次のフィールドワーク実習や卒業論文で、私がしてきたことの1 つでもあります。
フィールドワーク実習は、静岡県内の調査地に一週間泊り込みで調査を行い、報告書を書き上げます。テーマの設定や事前調査、報告書を仕上げる期間を合わせると1 年を超える長丁場ですが、報告書が完成したときは、大きな達成感を感じました。
コースでの学びを通じて、私が成長できたと思うことが2 つあります。1 つ目は、インタビュー時のマナーや相手の話を聞く力が身についたことです。これは社会人になれば、当然にできなくてはならないことで、フィールドワークを通して、ときには失敗から学ぶことができました。2 つ目は、私たちの周りにある当たり前の出来事を一歩引いた視点から見られるようになったことです。実習や卒業論文は自分でテーマを設定します。普段なら素通りしてしまうような社会や地域の出来事に自ら着目し、先生方の指導もあり、文化人類学的な視点で記述や分析ができるようになりました。文化人類学に直接関わる仕事に就かなくても、こうした力は私の武器になると思います。
*注<旧>文化人類学コースは、2020年4月から<新>人間学コース文化人類学分野となりました。
